安里屋ユンタ♪

 

 

2月に西表島に行った。

 

 

早朝に車と電車を乗り継ぎ関西国際空港へ行き、そしてJALで石垣空港まで飛ぶ。

そこから離島ターミナルまで石垣島内を走る路線バスに乗り、離島ターミナルからは西表島まで定期連絡船に乗船する。

さらに西表島に着いた後、ホテルまでの送迎も兼ねた島の定期路線バスに乗る。

 

 

日本の南西のかなり端まで行き、帰りは行きと同じ経路を逆に辿り、おまけにそれを二日間でこなすというハードな強行軍。

 

 

たまにしか乗れない飛行機で、そして移動の時間も長く、今回の旅の多くの部分を占めた。

できることなら移動自体を楽しみたいと思った。

 

 

 

 

ただし、天気が悪いと後に乗る船の時間が左右されて、運行スケジュール上どうしても西表島に到着できないのではという不安が最初からあった。

そして当日の天気予報は時々雨、白波立つ強風…。

 

 

空の上で楽しみたいという気分と、天気を心配する気持ちに挟まれていた。

この時間をなんとか楽しもうと、自分自身の気分を盛り上げるために、機内販売のオリオンビールを飲んだ。

 

 

 

 

私は普段からどちらかといえば薄い味のビールの方を好んで飲んでいるから、沖縄のオリオンビールが大好きです。

公共の交通機関を使ったおかげで、オリオンビールが飲めるというささやかな幸せを味わえた。

 

 

石垣島空港に到着してから、路線バスの乗り場を探しせわしなく乗り込む。

妻は石垣島に来たのは二度目だったけれど、私は初めてだった。

 

 

石垣島で2泊ぐらいのんびり過ごして、石垣島を起点にどこかの離島で過ごすというのが理想なのかもしれない。

けれども、私の人生はいつも理想通りにはいかない。

人生初めての石垣島を路線バスの窓から30分だけ観光する。

後ろ髪を強く引かれるような現実を、バスの中で静かに受け入れながら、離島ターミナルに着いた。

 

 

 

 

 

予報通り強風の雨という悪天候だったけれど、定期連絡船は予定通り出港するというアナウンスだった。

少しホッとしながら慌てて昼ごはんを食べる場所を探す。

 

 

短い乗り継ぎ時間の中で、しかも二日間しかない旅先での貴重な一食だ。

選択肢は限られていたけれど、最初から離島ターミナルにあるこの店で食べようと決めてあった。

ソーキそばと地元で採れた新鮮なマグロ丼を美味しく頂いた。

私たちが注文した後に沢山のお客さんが入ってきたので、すぐに座れて殆ど待つことなく食事を終えたのは幸運だったかもしれない。

 

 

 

 

船は波と風とその船自体の速さでかなり揺れた。

波に船が弾かれて大きく跳ねて、「バン」と船底で大きな音を立てて、船体が海に着水することもあった。

 

 

ざわめく観光客の動揺の中、船員や地元の人たちは何も表情を変えていなかった。

これくらいの揺れは当たり前なのかもしれない。

 

 

この旅の移動中ずっと写真を撮り続けた。

途中で竹富島を右手に眺めながら、波に打たれる窓の風景をうまく撮れないと悩んでいる間に西表島についた。

 

 

 

 

西表島に着くと、再び路線バスの乗り場とバスを探す。

この日はハードボイルド小説の主人公のように、淡々と冷徹に目的のホテルに到着するという任務をこなしている気分。

 

 

バスに乗り、その座席に着くとようやく西表島に着いたなという実感が湧いてくる。

 

 

「任務完了…」ようやく少し落ち着いた気持ちになった。

動き出したバスの外の景色が、じんわりと心に染み込んで入ってくる…。

 

 

 西表島はジャングルだ。

 

 

ここに来る前から事前に多少は下調べしてあったけれど

その想像をはるかに超えるジャングルだった。

 

 

島がジャングルなのではない。

ジャングルが島なのだ。

どう違うのかと聞かれると困るのだけれど、

そこはジャングル…。

 

 

例えばカレーライスか、ライスカレーかと尋ねられたら、カレーライスと答えるように…その世界での中心はカレーではないか。

 

 

 

 

 

周囲に民家も何もない、ジャングルの中にただポツンと佇むホテルに着く。

すぐに荷物を整理して、歩いて5分くらいの海岸へ散歩に出る。

 

 

ジャングルが島であるから、当然ジャングルの一番端は海だ。

 

 

ジャングルと海はマングローブというジャングルの一部分とつながっている。

砂浜である場所もあるけれど…川の周囲ではジャングルと海が混じり合っている。

 

 

そこではジャングルが海だ。

 

 

その日の天候が荒れていたため波は濁っていた。

足だけ海に入れたけれど、水温は冬の海の冷たさではなく、無理をすれば泳げなくもないくらいだった。

 

 

暗くなる直前にホテルに戻る。

殆ど地元の食材で調理された沖縄の郷土料理と古代米の食事を頂き、次の日に備えてその日は早めに休む。

 

 

 

 

翌朝6時に起きる。

この日は旅の目的のジャングルツアー。

「ユツン3段の滝」というツアーを予約してあった。

 

 

午前9時にホテルのロビー集合…ガイドさんと会う。

ガイド二人に対して私たち二人という最小人数での催行だった。

専属のガイドを頼んだようで得をした気分になる。

 

 

ジャングルツアー用の施設まで行き、ジャングル内での様々な注意点を聞く。沢靴などの装備をお借りして、ホテルが用意してくれたお昼のお弁当や水筒などの荷物の装備分けをした。

そして島の内側へ、つまりさらなるジャングルの奥へ向けて出発する。

 

 

 

 

本州の森の植生とは明らかに異なる草木に囲まれた道を、安全のためガイドさんに挟まれて黙々と歩く。

途中写真が撮りたいとお願いすると、私たちの気がすむまで歩くのを待ってくれた。

 

 

ガイドさんから聞いた話だけれど、西表島にどれくらいの数の河川があるのか、正確な数はまだ分かっていないそうだ。

島の内陸部には、まだまだ未開の場所も多いらしい。

 

 

もし沢登りすることを期待してツアーに参加する人がいれば、厳密に言えば、沢を遡上し岩を登る沢登りとは異なるものと言わざるをえない。

 

 

ツアーではある程度整備された登山道を歩き、何回か沢を横切るために沢の中を歩く。

時にズボン下くらいまで水に浸かる。

 

 

殆ど人が入っていない、ハブが潜むジャングルの中を歩くのだ。

これ以上のスリルや困難は必要ないと思う。

 

 

 

 

ジャングルの中をガイドさんたちと一緒にただただ歩く。

そしてその瞬間、自分たちがジャングルの内側に存在していることを強く感じる。

私たちにはこれ以上望むものはない。

 

 

歩きながら、ガイドさんたちとお話ししたことが今も心に残る。

そこで初めて出会う知らない人たちと一緒に歩くのはいいものだなと思った。

 

 

周りの特異な景色に圧倒され続けながら、目的の滝の下に着き、最後にかなり急な道を登り滝の上に着いた。

 

 

 

 

滝の上から景色を眺めて感じた。

 

 

石垣島についてから公共の場で沖縄民謡を耳にすることが多かった。

そして西表島に着いてからも当然のように沖縄民謡を耳にした。

   

 

 

 

ここからは沖縄民謡、安里屋ユンタ♪にのせて。

 

 

 

 

 

滝上で景色を眺めながら持ってきたお弁当を食べた。

そこは風が強く寒かったが、ジャーに収められたお弁当は温かく美味しかった。

 

 

気が済むまで写真を撮り、来た道を戻る。

 

 

 

 

沢の水が美しく留まっている場所があり、そこで休憩し写真を撮る。

夏はここで泳いで遊ぶそうだ。

 

 

最後に、マングローブの生えている海のそばの川まで行き、マングローブある景色の写真を撮り、ガイドさんに今日一日どうもありがとうとお礼を述べる。

 

 

 

 

シャワーを浴びるため、ホテルまでガイドさんたちに送迎してもらう車の中で、イリオモテヤマネコを見ることができなかったのは少し残念だったと話した。

 

 

その話の流れの中で、

「今日の朝、ホテルの自分たちの部屋のベランダの前に大きな鳥が止まっていて、たまたま写真が撮れたのだけれど…」

「この鳥の名前は何ですか?」と写真を見せて尋ねた。

 

 

ガイドさんたちは、ポカンとびっくりした顔をして…しばらく沈黙した後、

「特別天然記念物のカンムリワシです」と教えてくれた。

 

 


 

 

ジャングルを満喫して島を後にする。

ホテルから大原港までは、ホテルのスタッフの方がバンを出して送ってくれた。

 

 

「仕事が休みの日は何をしているのですか?」と車の中で尋ねると

「リーフの先まで30分泳いで、そこで銛を使って魚を突きます」という答えが返ってきた。

あたりまえだけれど…人には色々な人生があるのだなと思った。

 

 

 

 

 

港からは再びハードボイルドの世界に入る。

私たちは来た道を家へ向かって帰った。

 

 

 

 

 

 

 

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